猫も一緒に過ごすオーダーメイドの本棚


 
 
 

 

 

コーポラティブハウスへの参加に⾄った経緯をお聞かせください。


もともと実家の近くで分譲マンションなどを探していましたが、なかなか良いと思うものに出会えませんでした。どうしようかと思っていた時に、同僚からコーポラティブハウスのことを聞いたのが、興味をもった最初のきっかけです。⾃由に設計しながら、かつ⽇常的な管理は管理会社が対応してくれるというしくみは良いと思いました。⼾建て住宅はメンテナンスが⼤変そうで、⾃分には無理かなぁと思っていました。
 
 

松島邸はオリジナル本棚が特徴的ですね。これは最初からイメージしていたのですか?


いえ。本をたくさん持っていること、本棚のある家に憧れているということは設計者に伝えましたが、ここまでオリジナルなものをつくることまではイメージしていませんでした。個室を壁で区切らずに広く使うにはどうやって仕切ろうかと考えていたときに、床に段差を設けてそこに本棚をつくるという案が出てきました。
 
 

⼀般的な本棚と⽐べるとグリッドも⼤きく、また変則的ですね。


ここに置いている本はビジュアルブックが中⼼で、サイズもまちまち。奥⾏のある本があったり、分厚い本があったり。⼀般的な本棚だと⼊らないこともあるので、グリッドは⼤きくしてもらいました。無駄なスペースが多いように⾒えるかもしれませんが、変形の本が多いこともあり、また部屋の中央にあるので⾒栄えも⼤切にしたくリズムをつけてもらった結果、このようになりました。さらに、本って意外と重いんですよね。紙の塊のようなものなので、普通の本棚だと曲がってしまうこともあります。最終的に合板(ラーチ合板)でつくった本棚はかなり丈夫で、安⼼です。
 
 

猫の通り道、猫のトイレ、といった設えもオリジナル。もともと猫と⼀緒に暮らすことを視野に⼊れて設計を進められていましたね。


猫を飼いたいとずっと思っていました。なので、猫と遊べる本棚がいいな、猫⽤のトイレはどうやって隠そうかな、といろいろ考えながらつくりました。

竣⼯後、本当に偶然に猫を譲り受けることになりました。ただ、最初は猫についての知識もありませんでしたので、招き⼊れたときは発⾒の連続でした。例えばものすごい運動量だと知り、横移動だけでなく縦移動もできるように、後でキャットタワーをつくったりしました。いまはテレビボードから⽊のサッシカバーを通ってキャットタワー、といったように楽しく移動しているみたいです。

なるべく広く感じられるように

 

⽞関とキッチンとの位置関係も、特徴的ですね。


部屋全体のイメージは、完全に個室を区切るのではなくて、⼤きなワンルームのように空間がつながっている家。リビングも、決して広くない空間を有効に使ってなるべく広く感じるような⽅法を考えて、⽞関からすぐ通じるようにしました。普通なら⽞関からリビングが⾒えないようにクランクさせたりしようと考えますが。

ですので、⽞関のすぐ隣にキッチンがあり、下⾜⼊れと兼⽤するというアイデアも、⾃然と受け⼊れることができました。設計者から「嫌かもしれませんが・・・」と前置きされつつ、キッチンはコンロと流し台とを分けてレイアウトして、⽚⽅を下⾜⼊れと兼⽤してはどうかと提案を受けました。結果としてキッチンの使い勝⼿もよく、部屋も広く使うことができています。

⽞関とキッチンとの間のガラスも、気に⼊っています。もともと鉄のフレームとガラスという組み合わせが好きで、あこがれていました。インテリア雑誌等で⾒て、部屋の間仕切りに使えたら素敵だなぁと思っていましたが、先に⾔ったように部屋を広く使う⽬的で間仕切りにはせず、代わりにここで使うことになりました。⽞関からの程よい⽬隠しにもなり、またガラスなので⼿元が暗くもならず、満⾜しています。

 

自分の中で物差しができる

コーポラティブハウスを検討されている⽅に、オススメをお聞かせください。


ものごとを知れる機会がたくさんあったことが、⾃分にとって⼀番良かったことだと思っています。建築に関する法律とか、どのような流れで設計が進んでいくのかとか、もっと細かい話で⾔えば、タイルにはどういうものがあって、それぞれ⾦額はいくらか、とか。完成したものを買ったのでは知れなかったであろうことも、知ることができました。このように、知ることで⾃分に新しい物差しができるのは良いことだと思っています。⼀般的な考え⽅・意⾒とは違うかもしれませんが・・・。

他の例を挙げれば・・・、管理組合の役員だった年に管理組合の年間の領収書を⾒たのですが、そういうものを⾒ていないと、⾼いのか安いのかが分かりません。植栽の剪定が年間何回でいくら、とか。もちろん知らなくても⼤丈夫なのでしょうけれど、主体的に知ることで、その⾦額の妥当性が分かるようになっていきます。それが分かる⼈⽣の⽅がいいなぁと思うんです。たくさんのことを知ることができるという点で、コーポラティブハウスはオススメです。

松島さんは、「モノの⾦額やプロセスを知る」ことへの意識を明確にもたれていました。細かい部分も含めて「知っている⾃分」と「知らずにいる⾃分」、どっちがいいかと考えたときに、知っている⾃分の⽅が良い。松島さんのようにここまで考えている⽅は少ないのではないでしょうか。たくさんの本に寄り添うように過ごせるオリジナル本棚。愛猫のための仕掛け。そして、全体的に空間を広く感じさせるためのレイアウトの⼯夫。ひとつひとつのこだわりを形にしつつ、プロジェクトを通してたくさんの知識を得ることができたそうです。本棚とキッチン側板の統⼀感が印象的な合板も、竣⼯後時間を経てその⾊を少しづつ変え、良い味を出しているように感じました。